これらのポストは著者の意見であり、WHOやGCP.Networkの公式見解を示すものではありません。

統合失調症のある人における早期死亡への対策

統合失調症を診断された人における早期死亡(平均寿命に達する前に亡くなる)率は、大変に高い。今日までにこの問題について行われた最大規模の研究は、最近アメリカで行われた75,000件の統合失調症患者の死亡ケースを分析したものである。この研究で、統合失調症と診断された人の死亡率は一般の同年代の平均と比べ、3.5倍にのぼるという結果が出た。またこの結果は、世界中の様々な財政状況の国々からの報告とも一致していた。この結果は、重要な示唆を含んでいる。統合失調症患者における早期死亡の主な死因は、予防や治療が可能なものであった、ということである。 

循環器系の疾患(19,000件)、がん(10,000件)、事故(6,000件)、糖尿病(3,000件)、自殺(2,500件)が主な死因であった。損失残余年数(YPLL)を指標として使用すると、自殺者の平均損失残余年数が最も高かった(38年)。しかし、循環器系の死因による死亡ケースの方が他と比べはるかに多く、また平均損失残余年数も高かった(27年)ため、トータルでみた際に、循環器系の死因による疾病負荷も最大であった。具体的には、循環器系の死因によるYPLL合計値は500,000年強であり、それと比較して自殺によるYPLLは100,000年弱であった。

これらの早期死亡ケースのうち、相当の割合において喫煙の影響が示唆されている。最も著しいのは慢性閉塞性肺疾患(COPD(肺気腫も含む))による死亡率の上昇であり、統合失調症患者におけるCOPD関連の死亡率は一般の同年代の平均に対して10倍にのぼる。公衆衛生施策であるたばこ税、たばこ購入の年齢制限、職場・レストラン・公共施設での禁煙などは、アメリカの人口全体での喫煙率の低下には大きく貢献したが、統合失調症患者の喫煙率にはほとんど影響がなかった。喫煙率低下とメンタルヘルス専門家に対する介入の研修機会提供は急務であり、引き続き努力が求められる。また、飲酒や薬物乱用も死因の大きな一つのため、物質乱用への認知度向上と、これに関連した害を減じる介入へのアクセス向上が必要である。

過剰死亡には、そのほかにも複数の要因が関連している。統合失調症をはじめ、重篤な精神疾患を患っている人が受ける医療は、通常よりも乏しい。また、身体面の医学的問題が見逃されがちである。スティグマが障害となり、統合失調症のある人が身体面の問題を訴えても、医療従事者たちが十分に取り合ってくれない。認知的またはコミュニケーションの問題のために、患者たちが自らの問題を言葉に表現できない。身体面で医療が必要な状態が指摘されても、最適な治療が施されない。

WHOは、Comprehensive Mental Health Action Plan and mental health GAP Action Programme (mhGAP)の中で、精神障害を持つ人々に対するよりよい全般的医療の提供を提唱している。WHOのインフォメーションシートでは、以下の3点が提案されている。 WHO Information Sheet on this topic proposes the following three key actions:

  1. 重篤な精神疾患をもつ人々の精神・行動面および身体面でのニーズに対する、予防・同定・アセスメント・治療のプロトコルを設けること
  2. 心身両方の医療サービスを統合し、一般的な医療ケアへのアクセス向上を図ること
  3.  スティグマ軽減に向けてを努力し、重篤な精神疾患の患者への差別をなくす。  

実践的かつ身近なレベルでは、メンタルヘルス専門家とプライマリケア従事者たちは、行動と身体の両側面から患者を看ることである。また教育者側は、これを研修の段階から強調してくべきである。

Reference

1. Olfson M, Tobias G, Huang C, et al. Premature mortality among adults with schizophrenia in the United States. JAMA Psychiatry 2015; 72: 1172-81. doi: 10.1001/jamapsychiatry.2015.1737