これらのポストは著者の意見であり、WHOやGCP.Networkの公式見解を示すものではありません。

ICD-11における不安及び恐怖関連障害のための診断ガイドライン案

 不安及び恐怖関連障害は全ての精神と行動の障害において最も多く、重要な機能障害や経済的損失、生活の質の低下と関連している。これらの障害は他の頻度の多い精神疾患や健康問題としばしば並存する。不運にも、そして非常に効果のある治療があるにもかかわらず、これらの疾患はすぐには診断されず、不要な苦痛を生んでいる。これらの事実を踏まえて、ICD-11のような公の分類により、臨床家が不安及び恐怖関連障害を効果的かつ効率的に理解するのをサポートする必要がある。さらに、不安は連続して存在する通常の感情的反応であり、この分類により、正常と疾患を区別する信頼できる方法を提供しなければならない。不安及び恐怖関連障害のためのICD-11分類の案は、これらの原則に基づいて作成されている。

 ICD-11では、人生を通して現れる不安及び恐怖関連障害は新しいグループにまとめている。ICD-10では、ほとんどの不安障害は神経症性障害,ストレス関連障害および身体表現性障害に含まれている。ICD-11への提案では、一次的な臨床症状として不安や恐怖を持つ疾患は全て、この新しいグループに含まれることになる。分離不安障害と場面緘黙症も、ICD-10では小児期の疾患に分けて分類されていたが、この新しいグループに含まれている。このグループの疾患はそれぞれ、不安の焦点、つまり、恐怖や不安を引き起こす刺激や状況、を特に重視した、主要な(つまり必要な)特徴により定義されている。生理学的覚醒や回避は全ての疾患で様々な程度に存在するため、不安の焦点が、診断的差別化の最も明確な基準となる。

強迫性障害とストレス関連障害もまた、不安及び恐怖関連障害群から分かれて、ICD-11ではそれぞれのグループに含まれる。ICD-11診断ガイドラインの案では、不安と恐怖はこれらの他の疾患でもしばしば症状として現れるという事実を含む、これらのグループの共通点を認識している。ICD-11診断ガイドラインの案では、重なり合う症状を持つ、不安及び恐怖関連障害と他の疾患をどのように区別するかについての実践的なアドバイスを提供している。ICD-11は、グループを超えた特定のカテゴリーを相互参照しており、これにより臨床的な有用性が高まるであろう。例えば、心気症(健康に関する不安障害)は、ひとつ以上の深刻で進行性の命に関わる病気にかかっているかもしれないという恐怖により特徴づけられる状態だが、この疾患は、幾つかのエビデンスに基づき、ICD-11では強迫性障害とそれに関連する障害群に分類されるよう提案されている。しかし、心気症は不安及び恐怖関連障害群にも相互参照されることになる。

 ICD-11では不安及び恐怖関連障害で重要な変更の追加が提案されている。第一に、経過、発生、男女間での頻度、治療への反応性が異なるという説得力のあるエビデンスがあるため、広場恐怖とパニック障害は別々の異なる診断可能な疾患となる。第二に、診断ガイドラインでは、パニック発作は他の不安及び恐怖関連障害の経過中に起きることがあり、特に恐怖を与える刺激や状況に暴露されることで引き起こされる傾向にあると明確に示される。これらの場合には、パニック障害を別に診断することは正しくはない。その代わりに、パニック発作が他の疾患の臨床症状のひとつとして現れる場合に適用できる、“パニック発作を伴う”という修飾語句を提供している。第三に、全般性不安障害の診断ガイドラインはより詳細になり、除外診断ではなくなる。この診断ガイドライン案では、分離不安障害は成人でも診断される可能性がある。さらに、文化的な多様性や臨床的判断を柔軟にするために、恣意的でエビデンスに基づかない症状の数や期間の閾値は、ICD-11の診断ガイドライン案では除かれている。

現在、不安及び恐怖関連障害のICD-11診断ガイドライン案は、GCPネットワークメンバーによる査読とコメントのために使用可能となっている。全てのコメントは、ICD-11診断ガイドラインの最終版を作成する際に検討される。さらに現在、世界中の臨床現場と同様に、GCPネットワークを通して、複数の言語で、ガイドライン案のフィールドテストを実施している。